天疱瘡(てんぽうそう)は、自己免疫疾患の一種で、皮膚や粘膜に水疱やびらんを引き起こす病気です。この病気は、免疫システムが誤って皮膚や粘膜の細胞同士をつなぐ接着分子(デスモグレイン)を攻撃することによって発生します。天疱瘡は、治療がないと命に関わることがあるため、早期診断と治療が重要です。
特徴
- 水疱とびらん: 皮膚や粘膜に痛みを伴う水疱やびらんが形成されます。これらは破れやすく、表面にびらんが残ります。
- 全身に広がる: 病変は全身の皮膚や口腔内、鼻腔、咽頭、眼瞼結膜、外陰部などの粘膜にも発生することがあります。
- 痛み: 痛みや不快感を伴うことが多く、特に口腔内の病変があると食事や飲み物の摂取が困難になることがあります。
種類
天疱瘡にはいくつかのタイプがありますが、主なものは以下の通りです:
- 尋常性天疱瘡: 最も一般的なタイプで、皮膚と粘膜の両方に影響を与えます。
- 落葉性天疱瘡: 皮膚のみが影響を受け、粘膜には影響がありません。
原因
天疱瘡の正確な原因は不明ですが、以下の要因が関与していると考えられています:
- 自己免疫反応: 免疫システムが誤ってデスモグレインという接着分子を攻撃します。
- 遺伝的要因: 家族歴がある場合、発症リスクが高まることがあります。
- 環境要因: 一部の薬剤や感染症が引き金となることがあります。
診断
診断は主に以下の方法で行われます:
- 臨床診断: 症状と病変の外観を確認します。
- 皮膚生検: 病変部の皮膚を採取して顕微鏡で検査します。
- 免疫蛍光検査: 皮膚組織で自己抗体の存在を確認します。
- 血液検査: 血中の自己抗体を測定します。
治療
天疱瘡の治療には以下の方法があります:
- ステロイド: 炎症を抑えるために、経口ステロイドが使用されます。
- 免疫抑制剤: 免疫反応を抑えるために、シクロスポリンなどの免疫抑制剤が処方されます。
- 生物学的製剤: リツキシマブなどの生物学的製剤が使用されることがあります。(日本では治験中です)
- 支持療法: 痛みの管理や二次感染の予防のために、適切な皮膚ケアや口腔ケアが行われます。
予後
適切な治療を受ければ、天疱瘡の症状を管理することが可能です。しかし、治療には長期間を要することが多く、再発することもあります。治療が早期に開始されるほど、予後は良好です。
天疱瘡は重篤な病気であるため、疑わしい症状が現れた場合は、早めに受診されることをおすすめします。